11:58AM
「茄子?高原SA」
2台のSLのランデブーは傍から見ても美しい。滑らかにそして力強く加速していく。
ランプウェイ近くにいた修学旅行のバスの脇を抜ける・・・
「すっげ〜かっちょいいな〜」
フルオープンの2人の耳に心地よく高校生達の声が聞こえる。後方のEzzyも長時間の修理から開放されて気分が高揚していたに違いない。前方を走るグラマロが手を上げた!
「お先にド〜ぞ〜!」と。
「よっしゃ!オイラのエヴォリューション・シルバーアロー・スーパーリミテッドについてこれるかい? べイべ〜」
5.6Lが吠える!ネガティブキャンバーに拍車をかけるかのように尻を沈み込ませ、ググッと加速する。流れるように走行車線に消えていった。


11:58AM
ランプウェイ近くにいた修学旅行のバスの脇を抜ける・・・
「すっげ〜かっちょいいな〜」
フルオープンの2人の耳に心地よく高校生達の声が聞こえる。
グラマロは気分が高揚した!
イケ〜トレイシ〜・・・?
スカッ!
という感覚と共にトレイシーのアクセルペダルがペタンと床に落ちた。
あ”?
グラマロはトレイシーに「イケ〜」と叫んだのだがどうやら「逝け〜」と受け取ったらしい。全くニホンゴは難しい。この時のミスコミュニケーションでトレイシーは逝ったのであった。厳密に言うとアクセルが死んだのであった。つまりエンジンは何事も無かったかのようにヒュルヒュルとアイドルしている。しかしアクセルには無反応である。

なんだ?ペ.ペダルに抵抗感がない!参った〜! Ezzy giveup !そしてHelp !
グラマロはエンジンストールの時のF1ドライバーさながら両手を揚げた!

しかしここでもミスコミュニケーションの悲劇が訪れる。前述したようにEzzyには、
「お先にド〜ぞ〜」に見えたのだった。グラマロはパニックになった。
いま、まさにアクセルが落ちたトレイシーと目の前を遠ざかってゆくシルバーの移動工具箱・・・
絶望感が彼を襲った。

「・・・・・・!・・・・・・・・?・・・・・・・!・・・・・・・・?」
冷静になろうとして入るが、現状を考えるだけでますますミゼラブルになってくる。
グラマロのロジックはこうだ・・・
@現在ランプウェイでエンコしている
Aアイドリングしかしないからほとんど動かない
Bさっきの観光バスがパーキングから出てくる
C「だっせ〜」おばちゃまと高校生の失笑を買う。
DEzzyはいない
EJAF→高い・・・休日・・・電車で帰る
オープン走行で絶好調のEzzyに電話のベルは届かなかった。何度かけても応答が無い。グラマロは考えた。考えた、そして考えた。そこでまずはアイドリングで走ろうと考えDへ入れたが微速である!時速換算だと5km/h程度である。いままさにランプウェイと本線が合流した地点である。次のICへ到着するには数時間かかりそうだ。しかもこの速度でETCレーンに入ったら後続車に殺されそうである。振り返るとそこにSA。しかし・・・
この時、グラマロはリバースに入れてみた。すると・・・スルスル動くではないか!ギヤ比の関係で前進は1速も2速も按配が悪いのだがリバースだとスルスル動くのである。よし!バックで次のICまで行こう!・・・まて?このままバックだとETCはどうなるんだ?
いやいや、そうじゃない。このままバックでSAへ戻ろう。わずか200mである。とりあえず安心である。
リバースで200m戻る間にグラマロは必至でEzzyにアクセスを試みるが・・・

12:00
「ハロ〜ハロ〜、こちらEzzy!Hey!GranMarron ! What Are you doing?Can You... insite me?」電話はしまいこんであるが、トランシーバーは手元にある。後方から消えたグラマロに投げかけるが・・・返事は無い。
Ezzyは何を隠そう学歴の後半は米国で過ごしている為、ついつい英語が出ちゃうのだった。後方にインサイトで確認できない様子は悟ったが、グラマロの事だから後からバヒュンって寸法だろう。そうはサセジと逆にEzzyは加速した。
実は、出発前に2人の間にはこんなやり取りがあった・・・
「Longはダメだしだと思ってゆっくり行くべし!お互いどうせ古いんだから必ずどこかに歪がでる。
それを見つけ出すのもひとつの目的・・・」(Ezzy氏 e-mailの抜粋)
つまり、トラブルは予想していたもののこんなに同時に訪れるなんて誰が考えようか・・・

12:10
200mバックしたグラマロはまず最初に挨拶した。GSのお兄さんに。
「ども!」(ニコリ)「ここ置かせてください。壊れちゃって〜バックしか出来ないんです〜あははははは、かっこ(括弧)爆〜なんてね〜」
緊急事態となると昔からおチャラケルのがグラマロの悪い癖である。バカ丸出しである。

GSの一角でグラマロはタバコに火をつけようとしたが、足元には大量のガソリンがあることに気づいた。危ない危ないここは1つ冷静になって考えた。
@まず自力で自走まで修理する必要がある。
Aアクセルがペタッと落ちたといいうことは、ワイヤーが外れただけ。
B外れている箇所を見つけて引っ掛ければおしまい!
C牛タン喰いながら「笑い話」・・・
机上の空論とはまさに事のである。まずはアクセルが動かすのはインジェクションの入り口だから・・・まずはエアクリーナー外せばいいのかなぁ?と単純に弁当箱を外した。するとワイヤーは無く・・・何やら粉砕したプラスチック片を発見した。
「なんじゃこりゃ?ここに砕けているということは・・・つまり・・・わぁ!ここにこんな形の物体があったんだ!ってことはこれはこうなって・・・へえ〜ベンツってワイヤーじゃなくて機械的にリンケージされているんだ!へ〜」
グラマロは、オートバイのように金属ワイヤーでアクセルがスロットルを引いているのかと思っていたが、全く違うリンケージ構造にシバシ感心していたが、
その
感心はあっという間に寒心(カンシン:『ぞっとする』の意)に変わった。

「ッツーことは、このパーツがなきゃ駄目ジャン。」

形がなくなったものを再生するのは大変難しいのである。グラマロは類稀なる空想少年であり特殊な感性を持ち合わせているので、粉砕したプラスチックがもともとどんな形状であったかを空想した。
モワ〜ン!
「頭に浮かんだ形を再生しちゃおう!プロジェクト」を急遽発足した。メンバーはグラマロ。・・・のみ。
その一部始終を見守っていたGSのお兄さんが言った。「こ・これどうぞ・・・」差し出したその手にあったのは使い古されたガスコンロであった。卓上のアレである。この境遇でジンギスカンでもしろというのか?グラマロは声を荒立てた。
「金属の部品がいろいろついているので、流用できるかと思って・・・分解して使ってください」
恐ろしく原始的な提案にグラマロは思わずアポロ13を思い出し、楽しくなってきた!

「よし!お兄ちゃん!オイラ地球に絶対帰るからね!」
気分はトムハンクスである。靴下でもコンロでも持ってきやがれ!

12:30
「おっかしいなぁ〜、いつまでたっても追いついてこないや・・・」
約30km前方でEzzyが独り言を呟いた。

第三話 完     4話へ続く・・・
私の名はバック・ジャウアー。日本ダービーの前日、
私にとって人生でもっとも長い一日が始まる…  16h 第二話


前回までのあらすじ
 ・・・っつーか読んでください→
「第一話へGO」  「第二話へGO」

観光バスに囲まれた2台のSL は修理を終え勢い良く飛び出した!おばあちゃん達の「ステキ〜」という黄色い声援に答え少々気分が高揚していたに違いない・・・
サスガに
「移動工具箱の異名をとるシルバーアローはその充実した工具、パーツにより緊急事態をわずか40分で解決してしまうのだから恐ろしい!逆境を乗り越えた2台の気分は絶好調だった!

 
TOPへ
一話へ
二話へ

リバースでSAのGSへ舞い戻ったトレイシー・・・