北関東弾道
シューティング・スター

2つの星
2004年、2つの大型彗星が一挙に、地球に飛来する。
この2つは、「ニート彗星」「リニア彗星」という。
リニア彗星は2004年4月末に、ニート彗星は2004年5月中旬に
太陽に最も接近することになるの。

いつ結成したともない「ワンスターで走ろう会」もともとは背中に★をしょった12Rで湾岸をぶっ飛ばそうというちょっぴりアナクロニズムを狙った冒涜系の悪ノリである
午前四時リニア彗星から報告が入った。
 「現在位置は日本の中心からおよそ南南西に180km、北極に向かって進行中」。
 あまりの漠とした表現に骨折しそうになったが、さすが彗星レヴェルの見地である。人間からの視線ではまさに骨折級だが地球儀で考えると針の先の一点を指しているという、我々「チーム・ドロンパ」のグローバルな感覚を示す好事例である。
 ボク(ニート彗星)は、すぐさま打電した・・・
 「ホクイ35.96 トウケイ138.45 オホーツクノミナミ2347kmシュツゲキマデ2h52m」
 彗星から彗星への打電、規模が違うのだ。目的地はN県T温泉だが我々彗星レヴェルになると温泉での過ごし方も違う。信じられないかもしれないが驚くべきことに我々のミッションはゆっくりとお湯に浸かって、浴衣を着て座敷で一杯やることだった。
フツ〜じゃねえか!

リニア彗星とニート彗星の接近は突然やってきた。
 新潟県は252号を北上中に県道57号に入る。
しかしこの県道、入り口がさっぱり判らない程に小さいのだ。小さな商店と民家の間にある小道を入っていくとそこが県道であるらしい。その先にある「杜々の森名水公園」で合流するべく先を急いだ。
 この県道の小さな入り口は到底自ら発見できるような代物ではなく国道沿いのGSに聞いたわけであるが、GSの職員曰く「まぁ確かに57号はそこの事だが・・・素人は入らねえほうがいい・・・」だそうだ。
 恐る恐る立ち入ってみたが意外や意外、紅葉が綺麗な小さなワインディング小道である。ここは飛ばして面白いというほど道幅はないがなにやらアドベンチャーを感じさせるロケーションである。狭いからやめておけという程度の意味だったのだろうが、少しイントネーションの違うおじさんの声は貫禄があった。
 ・・・と思っていたら対向車の音。こりゃ大変だと思ったら、正面から来たのはBMWアドベンチャー。
 リニア彗星と鉢合せになった。流石に彗星同士!「オホーツクの南2347km地点」でバッチリ合流できるのだ。(信じる?)
 早速、二機で名水100選に指定されている沸き水の水源に向かい「水」をいただくことにした。
 昼食もまだだったのでココならではの食べ物にありつくことにした。ボクが選んだのは「高菜饅頭」である。うっすら緑色を帯びたそれはなにやら美味そうではないか!しかしこの時、「高菜饅頭」の高菜は「蓬(ヨモギ)饅頭」のヨモギに当たるものとの認識である。つまり高菜は皮の部分に関与していてあくまでも中身はアンだと考えていたわけである。
 しかし・・・一口かじるとアンの代わりに高菜がワッサリできた。味付けはやや中華の香りであり、ことのほか美味である。良心的な値段、珍しくも美味いその「名水売店」に、ついついはまってしまいニートとリニアは複数回、売店のカウンターに足を運んだ。
 リニアが売店の小窓を覗く時に若干低いアルミのサッシにしたたかに頭を打った。
ドガッ!「…いで〜」
「ぎゃはははは・・・頭ワリ〜なぁ〜」とニート。リニアは苦渋の表情で苦しんでいる。
 6分20秒後、たこ焼きを買いにサッシを覗いたニートに異変があった。
ザクッ!「…ヴュ〜ッ」
さんざん笑っていたニートに、神は一瞥をくれたわけである。
ニートの失敗をリニアは事のほか喜んだ!

目的地T温泉でイタリア軍とイギリス軍に合流しミッション完了である。
翌日は二機の変態非行で・・・いやいや編隊飛行で3桁国道を中心に「遠回りして帰ろう」作戦決行である。
暖かいというよりは暑いくらいの日差し。しかし気温はそれほど高くなくシールドのベンチからはビューという連続音を伴い吹き込んでくる冷風に外気を感じる。緩やかな上り坂でもトルクフルなビッグバイクは綺麗にバンキングしながらストレスなく駆け上がる。二機のバンキングは完全にシンクロしていて、長く続くワインディングで寸分の狂いなくフォーメーションを維持する。
 やがて二機はシールド越しに指をたて3桁の数字を示したかと思うと、一宿一飯を共にしたとは思えないほど軽く手を上げただけで二股を左右に分かれていった。彗星は出会いもバッタリだが、別れもまたあっさりであるのだ。
 セパレートしてから2時間後・・・
 ボクは日光渋滞を嫌って北上しすぎたようだ。かなり北上し、東北自動車道の上りを数時間楽しんだのち帰還した。一方の彗星にも同様の遠回りな旅があったに違いない。
 今回の2彗星新潟大接近で、紅葉を楽しみながらのんびりドライブしているところを突然両脇から真っ赤な彗星が現れあっという間に無限遠点で一つに交わるという光景を目にした方もおいでになろう。彼らはきっと願い事が叶うに違いない。マグルには少々刺激が強すぎたか?
 
リニア彗星1150
空前絶後のツアラー。無睡眠で丸二日間2500kmなんて日常茶飯事である。僕に言わせれば、「どうかしている」。
高菜饅頭
お値段は100円そのほかにも数種類の見たこもない饅頭があった。さすが!水が美味いと饅頭も美味い?

ニート彗星900 
後を引く性格、事前に大騒ぎするワリには実際たいしたことがない技量。まるで彗星の様だと言われている由縁である。