BMWとメルセデス
そしてクラウンとエルグランドに乗って・・・

80年代のSLに乗った時、最初は緊張でわからなかったが、数年前まで所有していた同じく80年代BMWと似た硬質な走行感がある事に気がついた。もっとも気づかせてくれたのは最新の国産車である。最新の国産車で特に走行フィーリングには定評のある二台に試乗。その時、日本車には「あの」硬質感が無いんだ・・・と言う事に気づいたのだ。では硬質な走行感はいったい何処からくるのか?この感覚的要素を決定する機械的部位を考察してみた。

最新の国産車にも感じられなかったあのGerman製の自動車に共通の硬質な感じが、時代に無関係にメルセデスにもBMWにも共通して存在する事がわかってからというもの意識していたのだが明確な答えは見当たらない。そこで過去に所有したGerman車を紐解いてみる事にした。

その二台は、今は失われつつある独逸のそれをもっている84年500SLと89年525i。メカニカルな共通部分はSOHC、Kジェトロニックのドイツ製FRであることくらいで排気量も違えば、ボディー形状も用途もATも全く違う。ともに80年代の製造であることが最大の共通点と考えられるこの2台、基本設計はメルセデスが1970年代初頭、BMWは80年代後半と誕生は実に20年近い開きがある事も事実だ。

一方、クラウン、エルグランドそしてマーチ。すべて21世紀に入って発表された車で高品質な柔らかさ、静粛性に溢れている。実際は手のひらとお尻でしか触れていない巨大なマシーンのフィーリングはいったい何処からくるのか?とても興味深い。

ステアリングは手で触れる部分であり感触の多くはこの部分からの入力であろうと考える。そこでステアリングから手を離すとどうなるのか?メルセデスで手放し状態でアクセルを踏んだり離したりした時、ドイツ臭さは感じるのだろうか?やっぱりドイツ臭さは若干うせる気もするが基本路線は変わらない。何故だろう?この時気づいたのは、国産車とドイツ車が大きく違うのは他でもない粘り気のあるアクセルの感触であった。

エンジンの回転フィーリングも粘り気を感じるが、他人が踏んでいる時に助手席にいても感じない回転フィーリング。つまりこれはアクセラレータの抵抗感とリンクして生まれるものである。押しなべてドイツ車はアクセルのストロークが大きく重い。ぐっと踏み込む必要はあるが少々力を抜いてもアクセルペダルは強く戻ってこない。かといって渋いわけでは無い。これが絶妙なタッチで「仕上げられている」と感じたのは、製造年が大きく違うBMWのそれと全く同じ感触だったからである。逆に日産の軽いアクセルは、抵抗も無いだけに踏んでいる感覚に乏しい。気を抜くとペダルが戻るってくるので高速を走り続けるときクルーズコントロールが欲しくなる。

メルセデスやBMWでクルーズコントロールをいとおしくなった事は無く、いつも高速道路を降りた後、クルーズコントロールの存在を思い出すほどだ。

「使えばよかった・・・」

偶然かもしれないがウィンカーの感触も80年代のメルセデスとBMWはとても似ていて国産車と比較すると「渋い」に近い。どちらかというと力を要するフィーリングで「高級」感はない。

ただよくいわれる「うっかり」ウィンカーのスイッチが入ったなどと言う事は到底起きない。大きな遊び地帯を飛び越えてウィンカーのスイッチが入るところまで来て、更に力をいれて深く落とし込まないとウィンカーは点滅し続けないのだ。

・・・でステアリングはどうか?

これはハッキリと新型国産車とメルセデス・BMWの差を感じる重要な部分である。どういう表現が的確なのか難しいが、高級アンプのVolumeを触った事があるだろうか?MDやCDが一体になったミニコンポではない。単体で30〜100万円くらいする高級アンプである。オーディオコーナーにいくと稀においてあるが、一度触ってみると高級とは何か?が体感できる。ドイツ車のステアリングにはあの感覚がある。なんとなくダンパーの効いたヌルッとした感触である。卵豆腐をキレのいい包丁で切る感触がセルシオだとすると、熱したバターナイフでバターを切る感触が古いGermanの高級車である。

それともう1つ、一般の国産車は新車に近い状態でもステアリングをしっかり握って揺するとポストがシナル感触があり、下手するとカタカタと遊びがある。またステアリング自体、力を入れると歪みを感じることが出来る(実際に歪むわけではないが)。

メルセデス、BMWはステアリングを思い切り押し込んでも引いても捻っても歪みを感じる事は出来ない程の剛性をもつのが国産車と大きく違うところだ。いままでは大衆車と高級車を比較してもしかたがないと思っていたが、最近その認識は変化した。

何故なら4年落ちのフィアットPUNTOに試乗したが回転させるフィーリングは別としてもステアリング自体の剛性感はメルセデスのそれと全く同じであったからだ。

 あと・・・これは大変残念なのだがやはりステアリングは人間が手で握る部分。新型5シリーズのそれ、WEBで知り合ったEzzyさんのSLともに革巻であるが新型クラウンのそれは革が巻いてあるという事実があるだけ。革の持つ質感だとか利点は全くない。握った瞬間

「・・・あ〜あ」である。

 これならボクのSLや昔乗っていたBMWのシボ付きウレタングリップの方がどれだけましだろうか。革巻いてりゃ良いってもんじゃない事は声を大にして言いたい。だって牛さんが可愛そうだからだ。

・・・尻会いのシート

新幹線や飛行機のお粗末さとは比較にならない位良くなったと思われるのがシートである。正直に申し上げるがこればかりは好みの問題なのかもしれないがメルセデス、BMWのシートはさすがに疲れない。しかし最新のセルシオと比較した場合、古いドイツ車が強烈なアドバンテージを持っているとも思えないのだ。もっとも強烈ではないだけでアドバンテージは存在するが・・・。

その点、ボクが感動したシートはシトロエンのAX&ZX、全日空のA320である。

いままでありとあらゆる車、飛行機に試乗したが座った瞬間、シートの感触に感動したのは、後にも先にもこの二台と一機だけである。これに座るだけでも買う価値が・・・あるとは言わないがシート以外にも気に入った点があれば食指を動かされる車である。また、わざわざこれに座る為にA320に乗る必要はさらさらない事も付け加えておこう。

しかしながら残念な事に現存しているAX、ZXは満足できる程度のものはほとんど無いと断言できる。個人的にはAXが大好きなので10万円で赤いAXの5ドアATを買って100万円をかけてリストアするのは悪くないと思っているからボディーの程度が良いのであれば、無責任であるが買いなのかもしれない。ボクが興味を持てるフランス車といったらコイツとアールピーヌ、そしてバンテアンくらいか?ところですべて80年代というのはただの偶然なのだろうか。


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